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とんでも腐敵☆パートナー Act.1-4
2008 / 01 / 16 ( Wed ) 07:08:05
                                                               Act.2-1へジャンプ
 さて、そんなわけで、中古カーショップにやってきたあたし達。
 
 車に興味のないあたしにはもちろん初めての場所。
 
 想像してたのは、映画のワンシーンでよく見る一面ガラス張りのショールーム。モダンで広々とした室内にでんと置かれたピカピカの車。スーツ姿の男性。
 
 確かディーラーとかいうんだっけ?
 
 興味がないどころか車オンチのあたしにはディーラーってのが何なのかもよく分からないけど。
 
 まぁそれは置いといて、そんなあたしの想像は180度覆された。
 
 巨大な倉庫のような建物に、洒落っ気の欠片もないごちゃっとした店内。所狭しとぎゅうぎゅう詰めにされた何十台もの車。照明はどこか薄暗く、通路は狭く、なんとなく息苦しい。
 
 どう見てもショールームには見えない。

「ここって、車作ってる工場ですか?」
 
 物珍しげに辺りをきょろきょろ見回して言うあたしに、
 
「いや、ちゃんとした店だよ。結構大きなチェーン店」
 
 拝島さんが優しくカーショップについて解説してくれる。
 
 その話によると、ここは大量の中古車を取り扱う、安さが売りの中古屋さんらしい。回転が早いので色んな車が見れるんだとか。
 
 あたしは車のボディに触りながら「ふ~ん」と適当に相槌を打って見せた。
 
 それから拝島さんは、とある車の前まで来ると「朽木! これなんてどうかな?」と朽木さんを呼び、二人は車の話題に没頭しだした。
 
 拝島さんは朽木さんと肩を並べて狭い店内を歩き、あの車はどうだのこの車はこうだの語り、朽木さんはその話一つ一つに「あれはちょっと高いな」だの「これは車検が……」だのと返す。
 
 なんか、男の人の世界、って感じだ。
 
 やや疎外感を感じるけど、もともとこの二人を観賞するためについて来たのだ。ここは一歩退いたところから堪能させてもらおう。
 
 あたしは二人の周囲をこっそり回り、にやつく頬を押えながら眺め回した。
 
 話の内容からすると、車を買おうとしてるのは拝島さんの方らしい。
 
 朽木さんは、中古車情報に詳しいらしくて、拝島さんの中古車選びにアドバイスをするためについて来たようだ。
 
 なるほどなるほど、と二人の情報を盗み聞きし、二人の仲がどこまで進展してるのかを推し量るあたし。
 
 友人となってからの期間は長く、拝島さんは朽木さんを心から信頼してるようだ。
 
 多分、朽木さんはまだ拝島さんに何もしてない。
 
 押し倒すチャンスを窺ってると見た!
 
 拝島さんを見る朽木さんの目は優しい。でも時折、ハイエナのように貪欲な目を光らせる時がある。
 
 それを見逃すあたしではない。
 
 次の冬コミは、この二人をネタにした本を出そうと一人頷いたのだった。
 
 
 
 一通り店内を見て回った二人は、店の外に出て、ガレージで車をいじってる店員さんに声をかけた。
 
 その人が店員さんと分かったのは「はい、何でしょう?」という返事から察しがついたのだけど、着ている服はツナギの作業服で薄汚れていた。
 
 それからなにやら話し込む三人。
 
 と、おもむろに拝島さんが私の方を振り返り、「おーい」と手招きをした。
 
「はーい、何ですか?」
 
 暑いから店の中に待機してたあたしは仕方なく陽射しの強い外に走り出る。
 
「これから試乗させてもらえることになったんだ」
 
 拝島さんは嬉しそうにそう言った。
 
「試乗って、車に乗るんですか? もう買ったんですか?」
 
 答えるあたしに、
 
「違う。試乗ってのは書いて字の如くお試しで運転することだ」
 
 やや軽蔑の混じった口調で説明をくれる朽木さん。
 
「そんな冷ややかな目で見ないでください。萌えちゃうじゃないですか」
 
「その口にチャックがついてたらどれほど良かったことか……」
 
 そんな軽い応酬の後、店員さんが出してくれた車にあたしは目を奪われた。
 
 
「わっ! 可愛い!」
 
 
 それは、あたしの背丈よりも小さな赤い車。
 
 あたしが知ってる車は大抵横に長いのだけど、これは短くてこじんまりしてる。
 
 あまり丸みのないデザインながらも、どこかぽてぽてとした可愛らしい印象だった。
 
「ミニっていうんだよ。これが一番欲しかったんだ。在庫があってラッキーだったよ」
 
 その車の屋根をなでなでしながら拝島さんが言った。
 
 全体が赤い色なのに、屋根は白なんだこの車。そこがまたキュート。
 
「ホント、いいですね~これ! でも、こんな小さい車に男の人が乗るんですか?」
 
「男も女も関係ないよ。人気高いんだよ、この車」
 
 心底嬉しそうな様子。うわ。可愛い車にイケメン。これってかなり萌えポイント高いわ。
 
「栗子ちゃんも乗る?」
 
 不意に、拝島さんがそう言った。
 
「えっ! いいんですか!」
 
「その辺一周するだけだから、あんまり面白くはないかもだけど」
 
「乗ります乗ります! 乗せてください! 土下座でも靴磨きでも何でもしますよ!」
 
「いやそこまでしなくていいよ……栗子ちゃんて面白いなぁ」
 
 くくく、と笑われてしまった。
 
「ほらほら、早く乗るぞ」
 
 不機嫌な顔の朽木さんが私の肩を押して、開いたドアの中に半ば無理矢理押し込んだ。
 
 デフォルトで後部座席ですか朽木さん。滅茶苦茶ジェラシってないっすか?
 
「大人しくしてろよ貴様」
 
 押し込みついでにぼそりと耳元に囁きかけてくる。
 
「ひとを暴れ馬みたいに」
「暴れ馬の方がまだ可愛気がある」
 
 まったく失礼な攻め男だよ。そこに萌えるんだけど。
 
 なんて思ってると、前の座席に拝島さんと朽木さんが乗り込んできた。
 
 おおっ。ここも絶好の萌えスポットかもしれない!
 
 座席に座るイケメン二人を後ろからじっくり眺めることができる。
 
 絶景かな絶景かな。
 
 あたしは思わず手を擦り合わせて二人の後ろ姿に向かって拝んでしまった。
 
「じゃあ行くよ」
 
 ブルルルル……
 
 拝島さんがエンジンをスタートさせ、車体が小さく震え出す。
 
 男の人が運転する姿って、何気にカッコイイ。素直に見惚れる。
 
 それから車が動き出すと、
 
「きゃあ~~っ! 動いた動いたぁ~~っ! 凄いっ! お父さん以外の人の運転って初めて!」
 
 あたしは興奮して甲高い声で騒ぎまくった。
 
「煩いぞグリコ! 拝島が運転に集中できないだろう!」
 
「いいよいいよ朽木。俺の運転で喜んでもらえて俺も嬉しい」
 
 うはっ。拝島さんてめっちゃいい人だ。
 
 妄想のネタにするのが申し訳ないくらい。
 
 しばらくあたしは興奮を抑え込んで良い子に座っていた。
 
 外の景色が流れるのに目を向ける。
 
 車に乗ったのは初めてじゃないのに、なんだか新鮮な気分なのは何故だろう。
 
 やがて長いレンガ造りの塀が見えてきて。
 
「あ、ここ、俺達の大学だよ」
 
 拝島さんがナイス発言をしてくれた。
 
「はっ、拝島っ!」
 
 朽木さんが顔色を変える。
 
「へぇぇ~~~~……ここがそうですかぁ~なるほどぉ~~~……」
 
 にやりと笑うあたし。
 
 目はしっかり窓の外に固定され、通り過ぎる門に刻まれた文字を見逃しはしなかった。
 
「もう就職活動ってされてるんですか?」
 
 これはカマかけの質問だ。
 
「いや、薬学部は六年制だから。俺達は四年生だけど就職活動はないんだよ」
 
「ほぉぉ~~~~薬学部の四年生……なるほどなるほどです」
 
 殊更うんうん頷いて反芻してみせる。
 
 朽木さんがあたしを振り向いてギロリと睨みつけてくるのに対して、にんまりと笑顔を返した。
 
「今度大学に遊びに行ってもいいですかぁ~?」
 
「来るな!」
 
 朽木さん、即答だ。
 
「いいじゃないか朽木。いつでも遊びにおいでよ。構内を案内してあげるから」
 
「わぁ~い! 拝島さん、やっさしぃ~~! ありがとうございます!」
 
 
 くふふふふふ。
 
 これで入手すべき情報は全て揃った。
 
 まるでストーカーのようなノリで脳内メモに情報を書き込むあたし。
 
 にこにこ顔のあたしとは対照的に、不機嫌な顔で押し黙る朽木さん。
 
 水面下で密かに行われていたガンつけ合戦は、あたしの圧勝に終わったのだ。
 
「残念、もうドライブはお終いだ。店に着いたよ」
 
 拝島さんが少し寂しそうに言ってハンドルを切った。店のガレージに乗り入れる。
 
「どうだ拝島? これに決めるか?」
 
「う~ん……半分以上これに決める気持ちなんだけど……他の店も見てみたいかな」
 
 なんて会話をしながら、全員車を降りる。
 
 店員さんの方に足を向け、朽木さんと拝島さんは車に乗った感想をお互いに交わすのに夢中だった。
 
 置いてけぼりにされたあたしは、車のボンネットに寄りかかって待つことにしたのだけど。
 
 …………あれ?
 
 なんか、お尻がぐいぐい押されてる。
 
 まさかこんなところに痴漢がっ!?
 
 なワケがなく。
 
 あれ? もしかして、この車、動い……てる…………?
 
 この店、結構急な勾配の坂道にあり、ミニの横に並んだ車はみな下を向く形で停車している。
 
 お店の前の広々としたガレージは、両サイドに駐車スペースを設けられてるみたいなんだけど、今は向かいのスペースには車はなく、コンクリートの塀が聳え立っている。
 
 で、停車してるはずのミニは、その塀に向かって、ゆっくり、ゆっくり、移動してるように見えるようないや感じるような…………。
 
 
「えええええええええええっっ!!」
 
 
 途端、あたしは腹の底から搾り出すような叫び声をあげ、慌ててドアを開いて運転席に乗り込んだ。
 
「わっ!」
「な、なんだっ!?」
 
 驚いた拝島さんと朽木さんの声が聞こえる。
 
 でもあたしは二人を振り返る余裕なんかなくて、とりあえず前面パネルのスイッチを手当たり次第に押してみた。
 
 どれが何のスイッチなのかさっぱり分からない。
 
 ブレーキッ! ブレーキはどれなのよっ!
 
 色々押したり捻ったりしていると。
 
 ブルルルルルンッ
 
 エンジン音らしき音があがった。
 
 わーっ! エンジンかかっちゃったよう――――っ!
 
 段々頭がパニックになってくる。
 
「グリコっ! 何してるんだ!」
 
 朽木さんが運転席のドアを開けて怒鳴り込んできた。
 
「うるさいっ! 止めようとしてるに決まってんでしょ!」
 
 反射的に怒鳴り返す。
 
 車は依然、ゆっくりと前進していた。
 
「サイドブレーキを引くんだ!」
「どれだか分かんない!」
「シートの横のレバーだ!」
 
 言われて左の手元にあるレバーを倒してみた。
 
 途端にガコッと車体が大きく揺れる。
 
「馬鹿! それはシフトレバーだ!」
 
 でも結果的に車が止まったように思うけど。
 
 多分、これじゃ駄目なんだと、目につくレバーらしきモノを操作してみる。
 
 すると今度はフロントガラスの何か黒いものがメトロノームのように振れた。
 
「それはワイパーだぁぁっっ!!」
 
「知らないわよそんなの!」
 
 焦りが脳を駆け抜ける一方でめっちゃやたらにレバーを引いたりしてると、再び車が動き出した。
 
「もういい! どけっ! 俺が止めるっ!」
 
「嫌よっ! あたしはまだ戦える! コックピットを自分から降りたりするもんかぁっ!!」
 
「いいから降りろぉぉ――っっっ!!」
 
 
 どこっっ
 
『あ』
 
 
 気付いたら、車は塀に衝突してた。
 
 軽い衝撃の後、完全に停止する車。
 
 同じく停止するあたしと朽木さん。
 
 ゆっくりとしたスピードだったので大したことにはならなかったようだ。
 
 後から追いかけてきたらしい拝島さんがやや引きつった顔で背後の店員さんを振り返り、
 
 
「これください……」
 
 
 小さな声で言ったのだった。
 

    Act.2-1に続く
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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