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とんでも腐敵☆パートナー Act.2-1
2008 / 01 / 17 ( Thu ) 06:07:36
                                                               Act.2-2へジャンプ
<<<< 朽木side >>>>
 
 講義の終了を告げる鐘が鳴り、つむじの消え失せた教授が黒板の文字を消した後、「今日はここまでです」と小さく頭を下げた。
 
 教鞭を執る立場だというのに、何故学生達にそんな卑屈な態度をとるのか俺にはさっぱり理解できない。
 
 そんな小心者の教授がぼそぼそと喋るだけの講義など、つまらないを通り越して最早時間の無駄だと思われたが、必修講座なので仕方なく受講している。
 
 俺は手早く荷物をまとめた。
 
「朽木、学食に行くか?」
 
 隣の席の拝島がこちらを向いて言った。
「ああ」
 
 了解の意を示し、席を立ち上がる。と、
 
「ねぇ、私達も一緒に行っていい?」
 
 背後からねっとりと絡みつくような女の声が聞こえてきた。俺は心の中で「またか」とため息をつく。
 
 拝島が何か言う前に素早く後ろを振り返り、優しめの顔を作って返事をする。
 
「ごめん、この後調べ物があるから早めに食事を切り上げたいんだ。また今度ね」
 
 柔らかい口調で言うが、有無を言わせぬため、女がまだも食い下がろうと口を開けるのも無視して拝島の方に向き直る。
 
「さ、行こうか」
 
 下心丸出しの女の媚びた目など数秒と見るに耐えない。
 
 拝島と二人、早々に講義室を退散した。
 
 
 
「本当に人付き合いが苦手だよね、朽木って」
 
 薬学部棟を出てしばらく歩いてから拝島が言った。
 
「気を遣わなきゃいけないからな。親しく付き合う友人は一人か二人で十分だ」
 
 本当のところは違うのだが、拝島が勝手にそう解釈してくれてるのでそういうことにしてある。
 
 俺と拝島になんとか近付こうとする女達を追い払うのは、最早日常茶飯事と化していた。
 
 女嫌いを隠すために食事に付き合うくらいはしてもいいのだが、一人を受け入れると奴らはねずみ算式に増殖していくので全員きっぱりと断るようにしている。
 
 あとはこれが一番の理由だが、拝島に彼女ができるのを阻止するという狙いがあった。
 
 拝島は優しいので、放っておくと情にほだされて狡猾な女共と付き合いだしかねない。
 
 拝島を女共の魔手から守るのはなかなか至難の業だった。
 
「あ、そうだ朽木。今日出された課題のレポートで、調べたいものがあるから、後でお前の部屋に行ってもいいかな?」
 
「ああ、いつでも」
 
 俺の部屋には、薬学系の専門書が山のようにある。いちいち図書館に調べに行くのが面倒なので使用頻度の高い本は一通り買い揃えたのだ。
 
「今日は俺、バイトないから5時頃になるかな。あと、こないだ言ってたCDも貸してもらってもいいかな?」
 
「好きなの選んで持っていって構わないぞ」
 
「サンキュー」
 
 にこっとはにかむような拝島の笑顔は可愛い。
 あどけない、とはこういうのを指すのではないだろうか。
 
「そういえば、昨日のあの子、面白かったなぁ」
 
 突然、拝島が思い出したように言った。
 
 不意を突かれて、俺の表情は固まった。
 
「栗子、のことか?」
 
「そうそう、いいキャラしてたよね、カノジョ」
 
 思い出したくもない。
 あれはここ一番の悪夢だった。
 
「本当にすまなかった。アイツが迷惑をかけて」
 
 大した事故にならなかったものの、バンパーが一部破損した。それを拝島は修理費込みで買い取ったのだ。
 
「全然気にしてないよ。むしろ面白かったくらいだよ。朽木のあの慌てた様子……ぷっ。くくっ……悪い。あんな朽木、初めて見たからさ」
 
「確かに、あんなに肝を冷やしたのは久しぶりだった」
 
 俺は憮然として言った。
 
 なにせ見知らぬ女が、あろうことか俺を脅迫し、無理矢理俺と拝島の間に割り込んだうえに拝島の車を塀にぶつけたのだ。
 
 かなりあり得ない出来事だった。
 
 二度と会いたくはないが、あの様子だと近々この大学に乗り込んできそうだ。早急に対策を練らねばなるまい。
 
「ああいう子となら、朽木も付き合っていけるんじゃないかな」
 
 突然、拝島がとんでもないことを言い出して、俺は危うく外灯にぶつかるところだった。
 
「ちょっと俺の趣味じゃないな」
 
 慌てた顔を即座に取り繕って、苦笑を浮かべておく。あまり向きになって否定すると逆に怪しく思われるかもしれないからだ。
 
 心の中ではもちろん「冗談じゃないっ!!」と全力で否定している。
 
「結構いいコンビだと思うけどなぁ」
 
 拝島の笑えない冗談を「あんまりからかうなよ」と軽く受け流しつつ、既に人で溢れかえっている学食に入る。
 自然とその話は打ち切られた。
 
 人の出入りが激しい一方通行路と化した通路を進んで列に並び、定食の盆を持って席を探す。
 
 すると丁度長テーブルの端の四人組が席を立ったので、拝島に目で合図を送ってそこを確保した。
 
「すぐ席が空いて良かったね」
「ああ、ラッキーだった」
 
 移動が遅めの俺と拝島は、食堂に入る時は大抵満席状態なのでいつも席取りに苦労する。
 
 一番端の二席に拝島と向かい合わせで座りながら頷いた。
 
 と、まったく同じタイミングで拝島の隣に誰かが腰を下ろし、顔を上げた俺はその人物を視界に捉えてぎょっとした。
 
「お前はっ!」
「栗子ちゃん!」
 
 拝島も気付いて驚きの声をあげる。
 
「どうも~お邪魔しまっす♪」
 
 昨日の悪夢の再来か。
 
 女の皮を被った悪魔、桑名栗子がそこにやたらにこにこ顔で座っていたのだ。
 
「随分早いお出ましだな」
 
 予想していたとはいえ、早すぎる登場に少々焦ったのも事実だった。
 表情も苦々しげなものになってしまった己の未熟さに軽く失望する。
 
「善は急げ、果報は寝て待て、思い立ったら即実行のグリコですから!」
 
「違う! 真ん中のは180度意味が違う!」
 
「あんまり的確なツッコミくれると悶えちゃいますよ」
 
「頼むからそのまま悶絶死してくれないか」
 
 俺とグリコの間で見えない火花が散った。
 
「早速遊びに来たの? 栗子ちゃん」
 
 拝島。そいつに優しく話しかけるんじゃない。そいつは悪魔よりも性質の悪い化け物なんだぞ。
 
 そう言ってやりたい欲求をぐっと堪え、俺は憮然とした顔でグリコを睨んだ。
 
「はい、ちょっと見学と味見に来ました。他の大学の学食のメニューって気になりますよね」
 
「あ~確かに。気になるよね」
 
 グリコは俺の視線をものともせず拝島と会話を始めた。
 
 俺は面白い筈がなく、盆の上に載った野菜炒め定食をがつがつ口に運ぶ。
 
「ここの唐揚げ美味しいですねー」
「麻婆豆腐も結構いけるよ」
 
 くそっ。会話が弾んでいる。
 
「これも一口味見させてくださいなー」
 
 と、不意にグリコが俺の皿から野菜炒めを一盛りつまんで持っていった。
 
 まさに泥棒猫。
 
「勝手に盗るな!」
 
「心が狭いですねー」
 
「マナーの問題だ!」
 
「代わりにあたしの野菜あげますから」
 
「メインディッシュに対して付け合わせを返すかお前! 等価交換て言葉を知らないのか!?」
 
「野菜と野菜は等価です」
 
 なんでこんなくだらない会話をしなきゃいけないんだ。
 
 拝島の前だというのに、思いっきり声を荒げてるし。
 
 どうもこの女と喋ると、ついつい地が出てしまう。仮面が簡単に剥がれてしまう。冷静になるんだ。この女のペースに乗せられるな。
 
 俺は苛立ちを鎮め、とりあえず食べることに集中した。
 
「そういえば、昨日はどうもすみませんでした、拝島さん」
 
 最後の唐揚げを咀嚼した後、唐突にグリコが謝罪を口にした。
 
「そういえば」じゃないだろ。まず真っ先に謝れ。こいつは道徳の教育を受けてないのか。
 
「ああ、気にしないで。もともとは俺がサイドブレーキを引き忘れたのがいけなかったんだから。どうせほとんど買うつもりだったし、あのミニ。踏ん切りがついて丁度良かったよ」
 
「それなら良かったです」
 
 良くはない。車の代金に修理代が上乗せされたのは、ほぼこいつの責任だ。
 
「ところで、今日これから色々案内してあげたいところなんだけど……午後一から講義が入ってるんだ。残念ながら付き合ってあげれないんだけど、一人で大丈夫? 栗子ちゃん」
 
「平気ですよ。私も学食食べに来ただけですし。あと、図書館も見てみたいから適当に本読んで帰ります」
 
 は? やけにアッサリしてるな。
 
 俺は驚いてグリコをまじまじと見つめた。
 
 てっきり一日中付き纏って、色んなことを根堀り葉掘り訊いてくるかと思ってたんだが。
 
 ……………………何を企んでるんだこいつ?
 
 俺は訝しげな視線をグリコに送った。
 
「また今度ゆっくりお話しましょうね。じゃ、もう行きますから」
 
 グリコは邪気の見えない笑顔で言うと、席を立ち上がってお辞儀をひとつした。
 
 そして俺達が「あ、ああ、それじゃ」とやや戸惑いながら返す挨拶を受け止めた後、さっさと盆を持って去って行ったのだ。
 
 ………………本当に、何しに来たんだ?
 
 残された俺と拝島は、ぽかんとした顔でその後ろ姿を見送ったのだった。
 

    Act.2-2に続く
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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