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とんでも腐敵☆パートナー Act.3-3
2008 / 01 / 24 ( Thu ) 20:58:44
                                                               Act.3-4へジャンプ
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 昼休み。
 
 拝島と二人肩を並べ、学食へ通じる学内の道を歩いていた。
 
 今日も天気は晴れだ。毎日同じような空が続いていたが、陽射しは確実に温度を増している。もうすぐ夏本番といったところか。
 
 頭上の濃い緑が落とす影は、照りつける太陽から僅かに熱を奪ってくれた。
 
 湿った風が吹き、蝉の声が一際高く鳴り響く。
 
 拝島が不意にこちらを振り向いて言った。
 
「栗子ちゃん…………また来てるね」
 
「言うな拝島」
 
 せっかく忘れようとしてたのに。
 
 
 両側が緑地帯となっているこの道。
 低木や高木が多数植えられ、公園の散歩道のような安らぎの空間が演出されているが。
 
 先ほどから、安らぎとは程遠い気配が木々の合間を縫いながら、俺達の後をつけていた。
 
 邪気にまみれたその気配の正体など、推測するまでもない。
 
 ここ数週間、毎日のようにその気配は俺と拝島につき纏っていた。
 
 二人で道を歩いてる時。
 食事をしてる時。
 ベンチにもたれて雑談してる時。
 図書館で本の山に囲まれてる時。
 
 僅かなチャンスも逃すまいとする、獲物を狙うハンターのような視線を始終感じていた。
 
 感じるだけなら無視のしようもあるのだが、こいつは天然なんだかわざとなんだか、隠れ場所からもろ見えなのが始末に負えない。
 
 はっきり言って目障りだった。
 
 
「そろそろ警察に通報するべきかもしれないな」
 
「え。あれ、栗子ちゃんだろ? それはさすがに可哀想だよ……」
 
「拝島、あれはストーカーという立派な犯罪行為だ。犯罪者に優しい顔する必要はない。増長するだけだ」
 
「またまたぁ。朽木は冗談きついんだから」
 
 俺は大真面目に言ってるんだが。
 
 そんな会話をしながら進み、学食の入り口が見えてきた頃。
 
「おーい! 拝島ーっ!」
 
 背後から、拝島を呼ぶ声がして、俺と拝島は足を止めた。
 
「拝島拝島はいじまーっ!」
 
「そんなに何度も呼ばなくても聞こえてるよ」
 
 苦笑して応える拝島。
 
 無駄に元気な声の主は息せき切ってこちらに走り寄り、俺達の目の前に来ると、足をスライディングさせながら停まった。
 
「ぐっもーにんえぶりわん!」
 
「今は昼だけど」
 
 律儀に拝島はツッコミを入れてやる。
 
「高地にとっては朝だよな。また寝坊したんだろ、どうせ」
 
 俺は補足して言った。どうせというのは、朝の講義で姿を見なかったからだ。
 
 高地元治(たかちもとはる)。
 
 俺達と同じ科の同学生だ。やたら元気の有り余っている少年のような男だった。
 
 見た目は軟派な遊び人。金のブリーチの入ったツンツン頭でストリート系の服をよく着ている。
 
「はっはっはっ、よくぞ見抜いた朽木! 38勝57敗。ここまで競い合った良きライバルだったのだが、とうとう今朝オダブツにしてしまってな。邪魔する物がなくなったおかげでこんな時間までぐっすり眠れたぜ!」
 
「また目覚まし時計壊したのか……。てゆーか負けすぎじゃない? その戦績」
 
「俺には勝敗の決め方がよく分からないんだが」
 
 拝島と俺で順々に突っ込む。
 
 高地は拝島がツッコミ役と化す、数少ない相手なのだ。
 
「鳴る前に止めたら俺の勝ち。鳴っても起きれかったら俺の負け」
 
 高地は俺の疑問に答えたつもりなのか、何故か自慢気に胸を張って言った。
 
「どっちにしろ目覚まし時計の意味がないわけだな」
 
「目覚ましクンも気の毒に……」
 
 俺と拝島は揃ってため息をついた。
 
 この高地というお調子者は、俺と拝島の友人というほど親しいわけでもない。高地は誰とでもこのように喋るし、同学年はみな知り合いなのではないかと思う程に顔が広かった。
 
「で、何か用なの?」
 
 拝島が尋ねると、高地は思い出したように身を乗り出してきた。
 
「そうそう! お前、車買ったんだってな!」
 
「ああ、そのことか。うん、買ったよ。中古のミニ」
 
「もう納車したのか?」
 
「納車は今週末だけど……なんで?」
 
「初ドライブで海に行かないか!?」
 
 高地は勢い良く言った。
 それを聞いた瞬間、俺は内心眉をひそめた。
 
「海……? 高地と二人で?」
 
 そんなわけはない。俺はとっくに高地の目的を見抜いていた。
 
「なんで男二人で海行かなきゃなんねぇんだよ! 俺と拝島と朽木の三人とさ、女の子も誘ってさ、海水浴に行くんだよ!」
 
 やっぱり女目当てか。
 
 俺は深々とため息をついた。
 
 高地は無類の女好きで知られている。女の匂いを嗅ぎつければどんなイベントにも首を突っ込んでくるとか。
 
 そして大抵は口説きに失敗してこっぴどく振られるというオチがつくのも有名な話だ。
 
「俺も朽木もそういうの苦手だよ。海は他の奴と行きなよ」
 
 拝島が俺に気を遣ってくれた。
 
 これは……正直嬉しい。
 
「拝島と朽木だから女がついてくるんだろ! 俺の誘いじゃ女の子が釣れないんだよ!」
 
 もう少し建前を作るとかできないのかこいつは。あまりにもあけすけすぎる。
 
「な、頼むよ、友達だろ! 初ドライブにみんなでわいわい海行くのも最高じゃねぇか! ひと夏の思い出だよ! 
 太陽だよ! 
 スイカだよ! 
 水着だよ!」
 
 お前の目的は最後のひとつだけだろうが。
 
「悪いけど高地……」
 
 俺はきっぱり断って追い返そうと口を開いた。
 
 が。
 
「みんなでわいわい……」
 
 何を思ったのか、急に拝島が考え込むように目を泳がせて呟いた。
 
「そうそう、みんなでわいわい! 楽しみだろ!」
 
「拝島…………?」
 
 なんだ? どうしたんだ? 何故迷ってるような素振りを見せるんだ?
 
 俺が嫌な予感に襲われ、内心冷や汗を流してると。
 
「そうだ! 朽木、栗子ちゃん誘って行こうよ!」
 
「なにっ!?」
 
 拝島が、そんなとんでもないことを言い出したのだ。
 
「うん! みんなでドライブ、楽しそうじゃん! 俺、栗子ちゃん誘ってくる!」
 
 拝島はそう言うや否や、樹の陰から頭を突き出してカメラを構えるグリコのもとに走り出した。
 
「やめろ拝島っ! そいつと海だなんて……!」
 
 
 血の海になるぞっ!!
 
 
 俺は飛び出しそうになった言葉を飲み込んで、拝島の後を追いかけた。
 
「栗子ちゃーん! 一緒に海に行かない?」
 
 栗子は相変わらずビクッと身を震わせて樹の中に隠れようとする。
 
 だからとっくに気付かれてるというのに……。なんで悪あがきしようとするんだ。
 
「海……ですか?」
 
 グリコは一度引っ込めた顔をおずおずと出しながら訊き返してきた。
 
「拝島。こいつと海だなんて俺は嫌だぞ。絶対迷惑被ることになる。考え直してくれ」
 
「なんだなんだ? おっ、なかなか可愛い子じゃん! 拝島の知り合い? なんでこんなとこに隠れてんの?」
 
「俺のっていうか朽木の後輩。ね、行こうよ栗子ちゃん。友達も誘っておいで。みんなで海にドライブだよ!」
 
 俺と高地と拝島の言葉が入り乱れる。
 グリコは一瞬目を白黒させたが、話が飲み込めたのか、徐々に笑顔を見せ始めた。
 
「い、行きます行きます! 海へドライブ、いいですね!」
 
「駄目だっ! 冗談じゃない! 拝島、みんなで行きたいなら他の奴誘うから、こいつだけはよしてくれ!」
 
「一番朽木が気兼ねなく楽しめる相手だろ? 俺も栗子ちゃんと遊ぶの楽しいし。やっぱ初ドライブは賑やかに行きたいしさ。あ、でも栗子ちゃんの彼氏が怒るかな?」
 
「大丈夫! 全然問題ありません! ……朽木さん、嫌なら来なくてもいいんですよ?」
 
 グリコが挑発的な目で笑う。
 
 くっ…………こいつと拝島を二人にするわけには…………いかない。
 
 
「……絶対大人しくできるか?」
 
 俺は苦々しげにグリコを睨みつけて言った。
 
「借りてきた猫のつもりで!」
 
 絶対嘘だ。
 
 嘘だと分かっていながら、俺にはどうすることもできない。
 
 拝島が乗り気な以上、ここでグリコを撃退しても、こいつのことだからなんとか拝島に取り入って計画を成就させるだろう。
 
 初ドライブは拝島と二人で峠にでも走りに行こうかと思ってたのに…………。
 
 
 お ま え の せ い か。
 
 
 恨みのこもった目で高地を睨みつける。
 
 俺の視線を受け、たじたじっと後ずさった高地は拝島の背後に隠れ、
 
「な、なぁ拝島…………朽木って、こういうキャラだったっけ? なんか、怖くね?」
 
「栗子ちゃんが絡むとこうなんだよ。面白いだろ?」
 
 拝島は無邪気な笑顔で言ったのだった。
 
 
    Act.3-4に続く
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テーマ:自作連載小説 - ジャンル:小説・文学

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