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とんでも腐敵☆パートナー Act.4-2
2008 / 02 / 04 ( Mon ) 23:12:56
                                                               Act.4-3へジャンプ
<<<< 朽木side >>>>
 
 車中のグリコはとにかく煩かった。
 
「あーっ! 海! 見えてきたよっ!」
 
「いちいち解説しなくても見りゃ分かるわよ」
 
 冷たい表情の友人立倉に一蹴されてもまったくテンションは変わらない。俺の冷たい態度にグリコがまったくめげない原点をここに見た気がした。
 
 というかこの立倉という女、海に何しに行く気だ? 海水浴する姿は想像もつかん。
 まぁ俺も海に浸かる気はさらさらないが。
 
 周囲の景色は既に都市部を離れ、海の近くにまで来ていた。それほどの渋滞に巻き込まれることなく走れたおかげで、午前の比較的爽やかな海の風を感じることができる。
 
 久しぶりの運転はなかなか楽しかった。
 
 黒革のコンビハンドルはしっとりと手に馴染み、車との一体感を感じさせてくれた。乗り物を操作する醍醐味は、やはりハンドルを通して感じる乗り物との一体感だ。
 
 海岸線沿いの、カーブの多い道をゆったりと走る。陽の光が反射してキラキラと光る地平線が、山間を縫う俺の視界に、時折映っては過ぎていった。
 
 海水浴には興味はないが、こういう風景を目に入れるのは悪くない。
 
 バックミラーに映る拝島の赤い車に気を配り、時折合図を送りながらペースを合わせて走るのも。拝島と呼吸を合わせてるようで、楽しくなる。
 
 拝島の運転はかなり安定していた。初めての車なので多少心配してたのだが、それは杞憂だったようだ。
 
 若葉マークをつけないのか? とからかい半分で訊いた時、「そんなカッコ悪いのやだよ」と拗ねたような口調で言う拝島の顔を思い出して思わず笑みがこぼれた。
 
「あー! なんかスケベな笑い!」
 
 くっ。グリコに見られたか。
 回想は一瞬で掻き消された。
 
「何がスケベだ。そういう周囲に誤解を招く発言はよせと言っただろ」
 
 ここには立倉もいるというのに。
 
「私なら気にしないわよ。既に十分曲解できるような情報をグリコから聞いてるから」
 
 思わず車体を左右に揺らしてしまった。
 
「グリコ……お前、周囲に何を吹き込んでる……」
 
「えっ!? あたし、そんなにヤバイこと教えた? 鬼畜攻め生徒会長ってことくらいしか言ってないよね!?」
 
 それだけ言えば十分だ。
 
「後で覚えてろよ」
 
 ミラー越しに睨みつけると、悪びれもしてない顔に、取ってつけたような愛想笑いを貼り付けて「ごめーん」と首を傾ける。まったく危険極まりない女だ。このまま海に沈めてやろうか。
 
 それから爽やかな景色の中、爽やかでない会話が続き、気付けば目的地に到着していた。
 
 
 
 足の裏が焼けつきそうな程の熱を帯びた砂浜に降り立った時、俺は高地の誘いに乗ったことを猛烈に後悔した。
 
 青い海。白い砂浜。
 
 そんな情緒は破壊し尽くされてる。
 
 視界を埋める赤、青、黄、その他256色ではきかないのではと思う程の様々な色彩の群れ。海中にも、砂浜にも、景観の残骸すら感じ取れない程に侵食している。
 
 つまりは人ゴミというやつだ。
 
 そんなに大きな海水浴場ではなかったと思うのだが、やはりこの暑さ故か。家でじっとしてられない類の連中が所狭しとひしめき合っていた。
 
「……帰るか」
 
「賛成」
 
 俺と立倉は意見が合うようだ。似たもの同士なのかもしれない。既に帰る気満々で呟いた。
 
「えーっ! せっかく来たのに何言ってんの!? 泳ごうよー!」
 
 来た道を戻ろうと思ってたところを、グリコに掴まれる。見ると隣の立倉も腕を掴まれていた。グリコは不満気な顔で俺と立倉をそれぞれ片手で引っ張り、砂浜に連れて行こうと必死だった。
 
「あの海岸に泳げるスペースなんかあるか! 既に満員御礼だ!」
 
「あの程度の人ゴミに負けるくらいの信念でどうするの!? 夏コミはこれの比じゃないのよ! 戦わずして敵前逃亡などあたしは認めない!」
 
「知るか! 勝手に戦ってろ!」
 
 そんなくだらないが生死をかけたやり取りをしてると、後から追いついた拝島と高地が声をかけてきた。
 
「朽木ー! すごい人だねー!」
「おーっ。盛況だなー! 何してんだよ早く行こうぜ!」
 
「そうは言ってもな高地。あの状態じゃ……」
 
 俺は嫌そうなしかめっ面をしたが。
 
「とりあえず、場所があるか見て回ろうよ。泳がずに帰るのももったいないじゃん」
 
 にこっと笑って言う拝島にほだされてしまった。
 
「……まぁ……場所があればな」
 
 つい口ごもってしまう。
 俺は少し拝島に弱すぎるか?
 
「人が多いのも夏っぽくていいんじゃない? あたし喉乾いた。海の家探そ?」
 
 池上という女が緩いパーマのかかった髪を風になびかせて俺達を通り越していった。
 
 彼女が砂浜を行くと、数人の男が振り返る。
 
 ああいうタイプが女の中では一番付き合いやすい。媚びてくることはないし、無理に会話を進める必要もないからだ。大抵は相手のペースに合わせてくれる。
 
「真昼ちゃーん! 俺も行くよー!」
 
 金魚のフンよろしく高地が後を追って行った。
 
 ……高地。残念だが、その女はお前の手に余るぞ。
 
 どう考えても、高地の失敗談がひとつ増えるだけのような気がして、その背中に哀れみの視線を送っておいた。まぁ正直どうでもいいんだが。
 
「ところで朽木。珍しいね、そんな大荷物持ってくるなんて。いつも余計なものは持ち歩かないのに」
 
 気が進まないながらも歩き出す俺の横に並んだ拝島が、俺の抱えてるバッグの大きさに気付き、少し驚いた顔で訊く。
 
 それはまったくその通りで、今俺が肩にひっかけてるパンパンに膨らんだボストンバッグは、いつもの俺なら絶対に持ち歩かない代物だろう。
 
 なんとも答えようがないので、軽く肩をすくめて言った。
 
「まぁ、念のためにな」
 
 
 
 しばらく砂浜を歩くと、残念ながら空いてる場所が見つかった。一人で文句ばかり言うのも大人気ないので仕方なく確保する(既に立倉は諦めたようだ)。心の中で呪詛を吐きながらではあるが。
 
 先に男三人が更衣室で水着に着替え、残る女三人が着替えてる間、レジャーシートを広げたり飲み物を調達したりなどの準備をすることになった。
 
「朽木ー! パラソル借りてきたよー!」
 
 買ってきた飲み物をシートに置くと、背後から拝島の声に呼ばれて振り返った。
 
 瞬間、目が眩む。
 
 拝島とは海にも旅行にも共に行ったことはない。だから、拝島の素肌を見るのはこれが初めてだったわけだが。
 
 ……まずい。むらっときた。
 
 ここが公共の場でなければ思わず抱き締めてしまったかもしれない。
 
 細身ながらも程よく筋肉のついた体。
 バイトで肉体労働してたからだろうか。思ったより逞しい。
 
 その体は完全に成人男性のものではあるのだが、全体的に毛が薄く、少年がそのまま逞しく成長したかのような危ういバランスがあった。
 
 一言で言うと、綺麗だ。
 
 今すぐ俺のものにしたい。
 このまま攫ってしまいたい。
 
 だが、その欲望を実行に移すわけにはいかない。
 
 俺はその気のないノンケでも、無理矢理押し倒してその道に引きずり込む自信はある。実際、何度もそうしてきた。
 
 だが、拝島にはそれをしたくなかった。
 
 できるだけ、傷つけたくなかった。
 
 
 好きだ、拝島。
 
 
 抱きしめて、言ってしまいたい。
 
 お前の笑顔が好きだ。
 
 柔らかな髪が好きだ。
 
 温もりを含んだ、その眼差しが好きだ。
 
 こんな俺にも、生きる意味を見出してくれた。
 穏やかな気持ちを教えてくれた。
 あの時の眼差しのまま――
 
 
 ずっと、傍にいて欲しい。
 
 
 どうかずっと――――
 
 
「ここに置くよ」
 
 横から響いたドサッという音に、俺は意識を掴まれ、はっと我に返った。
 
 拝島が、ビーチパラソルを砂に差し込んだところだった。
 
「あ、ああ……」
 
 まだ胸にくすぶる昏い欲望を押さえ込んで頷いた。
 
 頭を冷やすため、買ってきたばかりのスポーツ飲料のペットボトルを開けて、中身を口に含む。
 
 冷えた液体が体に浸透し、中の熱を奪っていった。
 
「……ところで、高地は何してるの?」
 
 不意に拝島が、俺の横に目線をずらして言った。
 
 俺は完全無視してたのだが、にわかにその存在を思い出し、拝島に続いてそちらを見やった。
 
 真っ赤な顔でひたすら妙な作業に没頭する高地がそこにいた。
 
「見ての通り、なにやら膨らまそうとしてるみたいだな」
 
 半ば呆れて言う。
 
 そう。高地は持参してきたらしいマットのような物に、息を吹き込むのに必死だったのだ。
 
「ぷはぁーっ! はぁ、はぁ。ゴム、ボート。だよ」
 
 見てると給気用の孔から口を離した高地が、苦しげに教えてくれた。
 
「普通、そういうの、ポンプとか使うもんじゃない?」
 
「だって、はぁ、はぁ。わすれ、ちまった」
 
「なら諦めればいいだろ。それ以上続けると酸欠と日射病で倒れるぞ」
 
「いやだ! ラブラブボート作戦なんだ!」
 
 急に元気になった高地が断固主張する。
 
 そのネーミングセンスも問題だが、真の問題は、誰がこのボートに、高地と二人で乗ってくれるか、だ。
 
 徒労に終わることは目に見えていた。
 
「……拝島。好きにさせてやろう」
 
 本音は「勝手にやってろ」だ。
 
 そこへ。
 
「おまたでーす!」
 
 元気のいいグリコの声が聞こえてきた。
 
「おおっ! 待ってましたーっ!」
 
 高地が空気入れを中断し、飛び上がる。
 
 俺と拝島も向き直って三人を迎えた。
 
 白い砂浜を、「アチアチ」と飛び跳ねながらやってくるグリコ。その後ろに続く立倉と池上。
 
「わっ! わっ! うっひょ――っ! すっげ――っ!」
 
 今にも涎を垂らさんばかりの高地の歓声がしつこくて煩い。まぁ確かにこちらにやってくる二人の存在感は周囲からかなり抜きん出ているが。
 
 立倉、池上はセパレートタイプのビキニだった。池上のは大胆なカット。立倉のはミニスカート風。どちらもかなりスタイルが良いことが見てとれる。
 
 池上は長い髪をアップにして、ますます大人の女といった雰囲気を醸し出していた。モデルだと言われても違和感はないだろう。
 
 立倉は大きめの麦わら帽子を被り、気だるげに歩いてくる。さっきまで掛けてた眼鏡は外したようだ。こちらは池上より知性が際立つが、池上に負けず劣らず美女然としていた。
 
 そしてその二人の先頭を歩くグリコ……。
 
 ポニーテールに水色のワンピースの水着。
 
 とりたてて目を引く部分はどこにもない。
 強いて言えば、「お前は小学生か?」と突っ込みたくなる水着の子供っぽさか。
 
 はっきり言って、あの二人と並んで歩くと可哀想になるくらいに色気に差があった。
 
 胸は小さいというわけではないのだが、普通だし、全体的に小柄だし、同じ女子大生とは思えない。完全に後ろの二人の引き立て役だ。
 
 もっと、自分のレベルに釣り合った友人を選んだ方がいい。
 
「やっほー! って朽木さん、なんか今失礼な目であたしを見ませんでした?」
 
 俺の前までやってきたグリコがじとっと睨んで言った。
 
「悪い……哀れみが表に出てしまった」
 
「ムキー! 失礼の上塗りー!」
 
 猿のような怒り方をするグリコを「砂浜はペットは禁止だから騒ぐと捕まるぞ」などと少しからかってやる。と、俺の背後から拝島が前に出てグリコに向かい合った。
 
「可愛い水着じゃん。似合ってるよ、栗子ちゃん」
 
 瞬間、グリコの動きが止まる。
 
 目を丸くして拝島を凝視し、時間が止まったかのように硬直する。
 
 そういえば、俺は今パーカーを羽織ってるが、拝島は上半身裸だ。
 
 グリコの顔がみるみる朱に染まっていく。
 
 ……やはりこうなったか。
 
 俺は無言で踵を返し、荷物の場所に戻っていった。
 やたらバッグが大きかったのは、もちろんこのためのタオルを詰め込んできたからである。
 
「え? あれ? どうしたの栗子ちゃん……」
 
 心配した拝島が声をかける。
 その直後。
 
 
 予想通り、白い砂浜は、血の海と化したのだった。
 
  
    Act.4-3に続く
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